横領をしてしまった際の対応

「横領」の種類

刑法上「横領」とされているものには3種類あり、

・単純横領罪(刑法252条)

・業務上横領罪(刑法253条)

・遺失物等横領罪(刑法254条)

です(刑法第38章 横領の罪)。

単純横領罪

「自分が保管している他人の物」を領得したときに成立します(「他人が保管している」他人の物をとってしまった場合は窃盗罪です。)。

たとえば、

・友人から株を預かっているうちに金に困り、無断で売却した

・他人から借りた本を読んでいるうちに欲しくなり、自分のものにした

・建物を売って、代金も受け取ったのに、他の人に二重に売買して引き渡した

などの行為が、これに当たります(ただし、最初から騙すつもりで物の交付を受けた場合は、横領罪ではなく詐欺罪になります。)。

法定刑は「5年以下の懲役」、公訴時効は5年です。

業務上横領罪

「業務上」自分が保管している他人の物を領得したときに成立します。

業務上の保管者としては、

・職務上金銭を保管する役職員(経理担当者)

・質屋

・後見人

などが挙げられます。

少しややこしいのですが、

・経理担当者のように、財産管理を任されている方が会社の預金を自分の口座に移したり、現金を持ち去った場合は、「業務上」お金を「保管」している者による領得ですので、業務上横領罪になります。

これに対し、

・ただのヒラの店員さんが品物をネコババしたという場合、そもそも品物を「保管」しているのは店長さんであり店員さんではないと考えられているため、横領に当たらず、窃盗罪になります。

法定刑は「10年以下の懲役」です。業務者の責任は重いものとして、単純横領罪より刑が加重されています。

公訴時効は7年です。

遺失物横領罪(占有離脱物横領罪)

「誰も保管していない」他人の物を領得したときに成立します。落とし物をそのまま自分の物にした場合が典型です。法定刑は「1年以内の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」であり、公訴時効は3年です。

なお、「誰も保管していない」と言えない場合は別の罪になりますので、注意が必要です。

たとえば、

・宿泊客が旅館のトイレに置き忘れた財布は、旅館主が保管しているものと考えられています。

・また、「バスの改札口で行列に並んでいるうちに私物を置き忘れたが、約5分後に気づいて引き返した、距離にして約20mしか離れていなかった」という事案では、置き忘れた方が保管している状態はなお続いていると判断されました(最高裁昭和32年11月8日判決)。

そのため、これらの例で、財布や私物を持ち去ってしまうと、窃盗罪が成立することになります。

業務上の横領をした際に追及される可能性があること

では、会社の従業員の方が業務上横領罪に当たる行為をしてしまった場合、どのような責任が生じるのでしょうか?

3つのことが考えられます。

①民事上の請求

まず、横領したお金は本来会社のお金だったわけですので、会社は従業員に対し、「そのお金を返せ」と請求することができます(不当利得返還請求)。また、横領行為のせいで別に損害が生じたような場合は、損害賠償請求も認められます。

ただし、お給料との相殺は、労働基準法上は、できないことになっています。同法上、「賃金は…労働者に、その全額を支払わなければならない」とされているからです(労働基準法24条1項)。

身元保証人への請求

他方、会社との雇用契約を結ぶ際に、身元保証書を交わしているケースもあると思います。

その場合で、身元保証の期間が切れていない場合は、ご本人とは別に、保証人の方に対する金銭請求も認められることになります。

なお、身元保証の期間ですが、身元保証法という法律で決まっており、

・期間を定めなかった場合は3年(1条)

・期間を定めた場合でも、最長5年(2条)

となっています。

②労働契約上の懲戒処分

「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則の作成義務があるところ(労働基準法89条柱書)、通常、就業規則には、懲戒に関する事柄が定められています。

懲戒事由として「横領」を明記している場合も多いですが、そうでなくとも、「その他重大な非行」等といった条項が設けられています。したがって、従業員の方が横領をした場合、会社としては、懲戒処分をすることが可能なことがほとんどです。

そして、懲戒処分としては、懲戒解雇が選択されることが多いでしょう。こと業務上横領に関しては、それ自体が会社との信頼関係を大きく損ねる行為である上、複数回・継続的に行われることが多いですから、悪質性が高いと言わざるを得ず、会社としては、懲戒解雇相当と判断するのが通常です(もっとも、例外的に、何らかの酌むべき事情があると判断された場合であれば、懲戒減給ということもあり得るでしょう。)。

懲戒解雇がなされた場合、普通解雇との違いとして、

・「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇であるとして、一定の条件の下、解雇予告手当なしで即時解雇されることがあり得る

・退職金が不支給とされ得る

・失業保険の取扱い上、自己都合退職と同様になる

等があります。

③刑事告訴

刑事訴訟法上、「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。」とされています(230条)。したがって、会社は、刑事告訴をすることもできます。

業務上横領罪は親告罪(告訴がなければ公訴が提起できない罪)ではないのですが、実際上、刑事告訴がないのに警察が動くことはあまり考え難いところです。

しかし、会社による刑事告訴が受理された場合は、警察が捜査を開始します。

逮捕されるかどうかは被害額の大きさ等様々な事情次第ですが、逮捕されなくとも、警察や検察からは必ず呼び出されることになります。

そして、捜査の結果、検察官が公訴提起相当と判断すれば、公訴され、裁判に進みます。

横領をしてしまった際の、最適な行動について

以上を踏まえると、業務上横領に当たる行為をしてしまい、それが会社にばれてしまった場合、次のように行動するのが最適であるといえます。

①会社との示談交渉

横領してしまった方にとって一番の懸念は、刑事事件になってしまうことでしょう。

ここで、会社は営利団体ですから、横領が判明した場合に最優先に考えるのは損失の補填です。もちろん、懲戒解雇がされる可能性は高いですが、それを超えて、横領者が賠償を申し出ているのに、それを拒否してまで刑事告訴に踏み切ることはなかなか考え難いといえます。他方、前述のとおり、警察は実際上、被害会社からの告訴がなければ動きません。また、仮に既に告訴されているとしても、被害会社と示談が成立しているのであれば、逮捕するか、公訴を提起するか等の判断に、大きく影響してきます。

したがって、まずは会社と示談交渉をする、つまり「お金を返すので許してください」と申し出て、合意内容を書面化するよう働きかけるのがいいでしょう。一括での返済が難しいのであれば、分割などの条件交渉をすべきですし、必要に応じて家族の支援も求めてください。

逆に、何もしないのは一番よくありません。何もしないということは、(懲戒処分以外に)何も会社からの要求がなかったということだと考えられますが、それは、会社が、その方に見るべき資産がないから民事上の責任追及を諦め、刑事責任を問う方針に切り替えたからである可能性が高いからです。この場合に、会社が警察に被害申告なり告訴なりをすると、警察は、被疑者本人に接触する前にまず客観証拠や関係者の供述証拠を集めますが、これには数か月の時間を要します。したがって、ご本人としては、もう終わったことだと思って貯金も何もしていない状況で、ある日突然、警察がやって来ることになります。こうなってしまうと、お金がない以上、示談を結ぼうにも交渉材料がないので何もできない、ということになりかねません。

必ず、示談を目指して交渉しましょう。

②自首

残念ながら示談に応じてくれそうにない場合、自首ということが考えられます。

ここで、自首というのは、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に」行う必要があります(刑法42条1項)。そして「捜査機関に発覚する前」とは、犯罪の発覚前又は犯人の誰であるかが判明する前を意味します(最高裁判所昭和24年5月14日判決)。

したがって、被害会社の被害申告や告訴があってからでは遅いので、やるならば早めに決断する必要があります。

①②を弁護士に依頼するメリットについて

以上の①②をご本人でなさることは、不可能ではありません。

しかし、まず①示談交渉について言えば、相手は会社ですから、弁護士を付けてくる可能性が高いです。また、そもそも会社と一個人とでは交渉力に差がありますから、厳しい条件を突きつけられることになるでしょう。その場合に、不用意に不利な書面に署名押印等してしまうと、後から覆すことができません。条件が分割払いとなっている場合は、長い間、不利な条件を甘受することになります。また、返済条件以外にも、どのような文言を書面に入れた方がよいのか、判断することは難しいのではないでしょうか。

これを交渉経験の豊富な弁護士に依頼すれば、当初から最適な落としどころを見据えて、交渉することができます

他方、②自首についても、弁護士に依頼すれば、まず、その時点で捜査機関に申し出た場合に自首に当たるのかどうかをきちんと判断することができます。また、自首に当たって捜査機関に提出する上申書の作成をサポートすることもできます。サポートに当たっては、ご本人のお話を伺い、捜査官が着目するであろうポイントを踏まえながら、具体的なアドバイスをさせていただきます。加えて、自首当日に弁護士が警察まで同行し、警察官との会話をリードすることも可能です。

また、早めに依頼することで、次の③の刑事弁護活動をスムーズに進めることができるという利点もあります。

是非、お早めのご相談を検討してみてください。

③刑事弁護活動

最後に、刑事事件化されてしまった場合にも、弁護士にご依頼いただければ、最善の刑事弁護を行います。

・示談ができていない場合でも、関係者の方々の協力を得ながら、示談に向けて交渉します。

・有利な材料を集め、起訴猶予や身体拘束からの解放に向けた活動を行います。

・公訴が提起された場合でも、執行猶予の獲得や減刑に向けて主張を組み立て、ご本人をサポートします。

 

横領をしてしまって後悔している方、やり直したいと思っている方は、弁護士への相談を検討してみてください。

いっしょに一歩を踏み出しましょう。

このようなお悩みはございませんか?

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