示談を成立させたい、被害者に謝りたい


本コラムでは,刑事事件の加害者,被疑者となった場合に,被害者の方と適切に謝罪の意思を伝え,示談を進める際のポイントをご紹介します。

刑事事件における示談の重要性

刑事事件においては,刑事事件の裁判とは別に,加害者と被害者が,当該事件に関する被害を回復するための被害弁償や慰謝料等を含めた損害賠償について話し合い,合意した金銭の支払いをすることによって,被害者から許しを得る場合があります。
このような手続を一般的に示談といいます。

示談の成立自体は,あくまでも民事上の損害賠償に関する合意であり,示談が成立したからといって,刑事事件が全て終わるわけではありません。
示談が成立した場合でも,検察庁や裁判所が被疑者・被告人に対して,刑事処分を科すという判断をすることがあります。

もっとも,警察,検察が刑事事件に関する処分を決定する際に示談が成立している場合には,加害者に有利な事情として考慮されることになります。そのため,示談が成立していれば,被疑者・被告人の刑事処分が軽減される可能性が高くなります。
したがって,不起訴処分等,自身にとって有利な処分を得たい場合,示談の成否が非常に重要な意味を持つことになります。

示談成立までの流れ

示談成立までの大きな流れとしては次の通りです。

  1. 被害者と連絡先を確認する
  2. 被害者と示談金等の条件交渉をする
  3. 示談の内容を確定させ示談書を作成
  4. 完成した示談書を提出する。
  5. 被害者の連絡先を知る

示談を行うためには,まず被害者との交渉のため,連絡を取る必要があります
そこで,弁護士から捜査機関側へ示談を申し入れるため,被害者の方と連絡が取りたい旨を伝えます。

これに対し,捜査機関側から被害者へ示談の意思を確認してもらい,被害者が承諾すれば,検察から弁護士へ連絡先が伝えられます。
この時,捜査機関側が弁護士以外の人に被害者の個人情報を渡すことは考え難いため,示談交渉は弁護士が介入して行うことになります

被害者との示談交渉開始

被害者が示談に応じる意向を示してくれるようであれば,弁護士が連絡を取り,依頼者の代わりに謝罪し,適正な示談金額や示談条件を提示して交渉します。

これに先立って,依頼者にも適切と思われる条件を事前に確認し,示談金の支払いの可否や,依頼者自身での支払いが難しい場合は身の回りで援助してくれる人がいないか,といった事項を確認しておくことになります。

示談内容の確定と書面の作成

交渉の結果,被害者との間で示談条件について合意ができた場合,その合意内容を記載した示談書を作成します。

具体的には,謝罪する旨の文言や,示談金の支払い,示談の成立により加害者を許す旨の文言などを記載した示談書を作成します。
完成した示談書に双方当事者が署名・押印をすることで,有効な示談合書が成立します。
その上で,示談書での取り決めに従い,示談金の支払を履行することになります。

示談書の提出

示談が成立し示談書を作成すると,弁護士は事件を担当している検察官へ示談書を提出します。

これにより,検察官は,示談の成立も考慮したうえで起訴,不起訴等の処分を決定することになります。

既に刑事裁判中である場合は,裁判所に証拠として示談書を提出することになります。
既に示談金の支払いも完了している場合は,領収書又は振込の記録も併せて提出することになります。

示談をするときに注意するポイント

被害者は,被害感情を有しており示談交渉も慎重に進める必要があります。
以下では,特に示談交渉において注意をすべき点を紹介します。

誠意を伝える

示談交渉に当たっては,まずは被害者に誠意を伝えることが大切です。

最初から言い訳のようなことを伝えたり,ビジネスライクにいきなり被害弁償の話をしたりすると気分を害する被害者もいます。
そのため,加害者が認めている事実関係については誠意をもって謝罪し,場合によっては謝罪文を持参するなどし,反省の意を伝えることも必要になります。

迅速な初動対応

まずは,被害者の方へ加害者が反省していること,謝罪の意思を有していることを伝えるべく,迅速に対応をするよう心掛ける必要があります。
加えて,被害者への連絡に加え,示談の内容の検討,示談金の準備の方法など,示談交渉をスムーズに進めるための対応も同時に行うことになります。

また,事件直後は被害者の被害感情が大きく,謝罪が受け入れられない場合もあります。
その場合でも,少し時間をおいて再度連絡を取るなど,粘り強い対応も求められます

事態を悪化させない

被害者の方は,加害者により自身の権利が侵害され,平穏な日常が害され,非常に怖い思いをした方もいます。
そのため,加害者に対しては,当然に悪感情を抱いていることが通常であり,代理人とはいえ,その対応を誤ると示談がうまくいかない可能性も否定できません。
そのため,被害者の方にきちんと誠意を示しつつ,事案に応じた適切な示談内容を提示できるよう,十分に検討を重ね,示談が円滑に行えるよう交渉するよう注意する必要があります

当人同士の示談交渉でトラブルになるケース

刑事事件の示談は,基本的に弁護士が行うことになります。
既に述べた通り,被害者の住所や連絡先といった個人情報を捜査機関が保有している場合,その情報を弁護士以外に開示することは現実的にないと言えるためです。

もっとも,もともとの知り合いが被害者のようなケースであれば,当事者間で直接示談交渉をすることも可能ではあります。
しかし,犯罪の被害者は加害者本人に対し強い処罰感情を抱いていることも多く,冷静に示談の話合いをすることは難しいといえます。そのため,当事者間で示談交渉を行うと感情的なもつれからトラブルとなり,まとまるはずであった示談交渉もまとまらない可能性も出てきます

示談が成立する事件の類型

刑事事件において示談が成立する事件としては,被害者がいる犯罪類型です。
被害者がいる犯罪の例としては,暴行,傷害などの身体に対する犯罪,窃盗,強盗や詐欺など他人の財産を奪う財産犯,痴漢,強制わいせつ,強制性交等などの性犯罪があげられます。

反対に,薬物事犯などは直接の被害者がいない犯罪類型になりますので,示談の対象となる被害者が存在せず,示談はできないことになります。この場合は,贖罪寄付を行うなどの方法を検討することになります。

示談交渉において当事務所ができること

刑事事件の被害者からすれば,加害者の行為により,身体や財産等が脅かされたことに加え,平穏な日常が奪われたことに対する怒りは筆舌に尽くしがたいものです。
そのため,加害者側からの示談要求は,簡単に受け入れられないことも十分に考えられます
そのような被害者側の方々に対して,内容を十分に吟味することなく,加害者本人が示談を持ち掛けることはより事態を悪化させるおそれもあります
そのため,第三者であり専門性を兼ね備えた弁護士の介入が示談交渉をするにあたっては必要不可です。

当事務所では,刑事事件の加害者の方から依頼を受けた場合,加害者の代理人として,法的専門性を活かし,妥当な交渉内容を見据えつつ,被害者の方に対し,少しでも加害者の誠意,謝罪の思いが伝わるよう,誠実に対応いたします。
示談交渉にあたっては,示談の内容を,依頼された事件ごとに充分に熟考しつつ,示談交渉を行い,示談の成立に向けて弁護活動を行います。

刑事事件で加害者となったしまった方は,刑事事件の処分が下る前に早期かつ適切な示談交渉を行うことが肝要です。ぜひ,一度,当事務所までご相談ください。

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