前科を付けたくない

1 前科とは
2 前歴とは
3 前科・前歴がつくことによる不利益
4 もしも逮捕されたら
1 前科とは
前科とは,刑事事件において「有罪の判決」を受け,刑を言い渡された経歴のことをいいます。
分かりやすい例でいえば,刑事事件を犯して逮捕・勾留されたのちに起訴され,裁判所で懲役刑や禁錮刑などの実刑判決を受けた場合が挙げられます。
もっとも,必ずしもこのような場合に限らず,執行猶予が付いた場合,簡単な書面審査で審理を行う略式手続で「罰金」(1万円以上)を受けた場合や,比較的軽い罪の場合に課せられる罰金よりも低額な「科料」(1万円未満)も含まれます。
あ
よく混同されるのですが,一定の範囲の交通事故を起こした際に納付することで刑事罰を免れる行政罰としての「反則金」や,行政上の義務違反などを理由に課される「過料」は,刑事手続とは別個の手続きになりますから,前科とはなりません。
2 前歴とは
前歴とは,警察や検察などの捜査機関によって犯罪の嫌疑を受けた経歴のことです。
典型的な例としては,被疑者として捜査対象となり取り調べを受けた場合,犯罪の嫌疑をかけられて逮捕(・勾留)されたが,最終的に不起訴処分(起訴猶予の場合も含みます)になった場合が挙げられます。
あ
警察署で始末書を書いて帰っただけのような場合には,被疑者として扱われておらず,前歴にもならない場合があります。
3 前科・前歴がつくことによる不利益
前科・前歴ともに,警察・検察などの捜査機関のデータベースや,本籍地の市区町村のデータベースに記録されます。
警察・検察などの捜査機関のデータベースには該当者が死亡するまで,市区町村のデータベースには刑の言い渡しの効力がなくなるまで記録は保存されますが,これらの情報は,プライバシー性の高い重要機密情報として厳重に保管されており,他人が調べたり閲覧したりすることはできませんから,外部に漏れる心配はありません。
あ
もっとも,前科情報は,人のうわさで広まることが多いですし,事件によってはネット上の書き込みから拡散される可能性があります。
あ
また,前科がついたことにより,日常生活にも影響が生じる場合があります。
例えば,海外にでる場合、国によっては入国拒否されたり、ビザがないと入国できないなどの制限があったりします。また、公務員や学校の教員、保育士などの資格・職業には付けません。他にも自身の就職や、親族の就職活動にマイナス評価となってしまうこともあります。
あ
※就職活動の際に,履歴書に賞罰欄がなければ,前科について書く必要はありません。
また,「前歴」にとどまる場合には賞罰欄のある履歴書になにも記入する必要はありませんが,「前科」があるにもかかわらず「賞罰なし」や「前科なし」などと記載してしまうと,前科が発覚した場合には経歴詐称により解雇される可能性もありますから,注意して下さい。
4 もしも逮捕されたら
逮捕されても、前科を付けないようにするためには、起訴されないようにすることが大切です。
現在の日本の刑事事件では、一旦起訴されれば、99.9%の確立で有罪となってしまいます。
ですので、起訴されないように、捜査機関に働きかける必要があります。
例えば、被害者がいる事件の場合、弁護士を通じて被害者に謝罪し、被害を弁償することによって、示談を成立させ、被害者から嘆願書を書いてもらいます。
これらの活動を検察官が起訴することを決定する前に行う必要があります。
そのためには、できるだけ早く弁護活動を行う必要があり、とにかく早く弁護士に相談して頂くことが必要なのです。
あ
事件の犯人ではないのに捕まってしまった場合は、逮捕後に勾留され、さらに勾留延長となってしまうことがあります。勾留延長までされてしまうと、最大23日間留置所から出られないことになってしまいます。
否認事件の取り調べはきつく、早く留置所から出たいという気持ちから、事実とは異なる供述をしてしまう方がいらっしゃいます。
しかし、一度自白調書が作成されると、後からそれを覆すのは困難になります。犯人でない場合は、絶対に認めてはいけません。
不当な取り調べを受けるリスクを回避するためにも、弁護士のサポートを受けましょう。
あ
弁護士は、被疑者が犯人ではない証拠を集めたり、面会(接見)に行き、今後の見通しや、ご家族の状況を伝えるなど、外部とのパイプ役となり、精神面のサポートも行います。
被疑者が事実を述べ続けた結果、他に被疑者が犯罪を行った客観的な証拠がないとして、嫌疑不十分で不起訴や処分保留で釈放されることもあります。
あ
いずれにしても、前科を付けないようにするためには、早期に弁護士に相談してください。