住居侵入罪・建造物侵入罪

1 住居侵入罪・建造物侵入罪とは

住居を侵す罪として,刑法130条前段に住居侵入罪,邸宅侵入罪,建造物侵入罪及び船舶侵入罪が規定されています。

これらの罪は,正当な理由なく,居住権者・管理権者の意思に反して,他人の家や建物等に無断で立ち入ることによって成立します。

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「住居」とは,日常生活に使用されている場所をいい,実態から判断します。したがって,家出をした息子が十数年の期間を経て実家に立ち入った場合,それが居住権者である両親の意思に反している場合には,住居侵入罪が成立します。

また,住居としての使用は一時的なものでも構いませんから,人が宿泊しているホテルや旅館の客室に無断で立ち入った場合にも,同罪が成立します。

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なお,「建造物」とは,住居と邸宅以外のものを指し,学校,銀行,ATM,デパート,官公庁,工場,倉庫,会社のビルなどがこれにあたります。

さらに,住居,邸宅や建造物には,塀などの建物の付属地として用いられていることが明らかなものも含まれます。したがって,のぞき目的で住居や建物の周囲に設置されている塀によじ登った時点で,住居侵入罪や建造物侵入罪が成立することになります。

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また,刑法130条後段には不退去罪も規定されています。これは,退去を命じられたのに,居住者の意思に反してその場に居座り続けた場合に成立します。不法侵入した者が,退去要求があったにも関わらず居座り続けた場合には,住居侵入罪のみが成立し,不退去罪はこれに吸収されると解されています。

 

2 具体例

  • 盗撮目的で,女子更衣室に忍び込んだ
  • 機密資料を持ち出す目的で,深夜に無断で学校や会社に忍び込んだ
  • 金品を盗む目的で,一軒家に忍び込んだ
  • 下着を盗む目的で,アパートの敷地内に侵入した
  • 入浴中の女性を覗き見るつもりで,民家の庭に忍び込んだ
  • 万引き目的で,スーパーや百貨店に立ち入った
  • 顧客の暗証番号等の情報を盗撮する目的で,ATMに立ち入った

住居侵入罪や建造物侵入罪は,それだけを聞くと軽微な犯罪のように受け取られることが少なくありません。もっとも,上の例のように,住居侵入は,それ自体を目的として行われることはほとんどなく,窃盗や強盗,わいせつ目的といった不法な目的を達成するための手段として行われることが多いです。

 

3 住居侵入罪・建造物侵入罪の弁護活動のポイント

住居侵入罪・建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金であり,それ自体はさほど重くはない犯罪といえます。

⑴住居侵入・建造物侵入罪の一罪のみが成立する場合

この場合,被害の程度が軽ければ,警察だけで事件を処理し,厳重注意をして終わる微罪処分が下されるにとどまり,不起訴処分となることが一般的です。また,検察に事件が送致された場合でも,示談が成立した場合にはほとんどが不起訴になりますし,示談が成立しなかった場合でも,初犯であれば公判請求(刑事裁判)になることなく,略式手続での罰金になるケースが多いです。

そうであっても,住居侵入罪の場合は,被害者が引っ越しをするなどをして住まいを移さない限り,再度加害者が被害者に接触する可能性があります。そのような事情から,法定刑が低い場合であっても,被疑者が逮捕される可能性は十分にあります。

また,被害者が示談に応じる場合でも,多くのケースでは不法侵入に恐怖心を抱いているため,転居することが多いです。その場合には,被害者の引越代等も示談金に含めて交渉することになりますから,示談金の額がかなりの高額になる可能性があることには注意する必要があります。

⑵住居侵入・建造物侵入罪以外にも他の犯罪が成立する場合

例えば,強盗目的で人の住居に侵入した場合,住居侵入罪と強盗罪とは,住居侵入が強盗罪という犯罪の「手段」になっていると評価され,刑法上,牽連犯(けんれんぱん,54条1項後段)として科刑上一罪として扱われます。

科刑上一罪として扱われるというのは,牽連犯にある犯罪のうちの最も重い刑により処罰されるということです。今回の例では,住居侵入罪の法定刑にかかわらず,強盗罪の法定刑である5年以上の有期懲役が法定刑となります。

その場合は,強盗罪について被害者と示談が成立していない場合には,不起訴処分(起訴猶予)を獲得できる可能性はどうしても低くなってしまい,実刑判決となる場合が多くなります。

 

4 まとめ

他人に勝手に家に立ち入られるという不快感は,被害者になってみなければ分からないほど強いものがあり,被害者の処罰感情が強いことも少なくはありません。また,被害者の中には,PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまうことも珍しくありません。

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このような場合,被害者は被疑者に恐怖心を抱いていることが通常ですから,当事者間だけで示談交渉を進めることは容易ではありません。

早い段階で弁護士に依頼して,弁護士が被害者と示談交渉をまとめることができれば,被疑者の早期釈放や不起訴処分につながる可能性が飛躍的に高まります。

逮捕されてしまった場合でも,早期に弁護士をつけて対処すれば,勾留されずに釈放される可能性を上げることができます。そのためにも,速やかに弁護士にご相談されることをお勧めします。

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また,窃盗目的や性犯罪目的で他人の家に侵入したものの,捜査機関や被害者が犯人を特定していない場合には,発覚前に自首することで,逮捕を回避することができる可能性があります。

もっとも,自首をすべきか否かについては,慎重な判断が必要になりますから,自首を検討されている場合には,早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

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当事務所は初回相談無料となっています。岡山地域で住居侵入・建造物侵入罪でお悩みの方は,まずは当事務所の弁護士にご相談下さい。

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