配偶者や恋人、友人が薬物を所持していたらどうすればいいか

本コラムでは,配偶者,恋人,友人が違法な薬物を所持しており,自身も共同所有者として薬物犯罪の当事者となってしまうケースについてご紹介します。

薬物に関する法律について

薬物を規制する法律としては,代表的なものとして次のような法律があげられます。ヘロイン,コカインについては③で,いわゆる危険ドラッグについては主に⑤により規制されます。
①覚せい剤取締法
②大麻取締法
③麻薬及び向精神薬取締法
④あへん法
⑤医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下では「薬機法」といいます)

薬物を使用した際の罪について

上記で例示した法律はそれぞれ,規制された薬物を法律上の正当な事由がなく,使用した場合の罪が定められています。

法令 行為 法定刑
①覚せい剤取締法 覚せい剤の使用 10年以下の懲役刑
②大麻取締法 大麻の使用 刑罰なし。ただし,大麻取扱者が所持の目的以外の目的に大麻を使用した場合は処罰される。
③麻薬等取締法 麻薬等の使用 10年以下の懲役刑
④あへん法 あへん又はけしがらの吸食 7年以下の懲役刑
⑤薬機法 危険ドラッグの使用 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑若しくはこれらが併科される。

薬物を所持した際の罪について(単純所持と営利目的所持)

薬物を所持した際の罪については,例えば自己で使用するために持っていたような場合(単純所持)と,売却して利益を図る目的で持っているような場合(営利目的)が想定されます。一般的には,薬物を社会に蔓延させて利益を図ろうとする営利目的所持の方が重い刑が科されることになります。

法令 行為 法定刑
①覚せい剤取締法 単純所持 10年以下の懲役刑
営利目的所持 1年以上の有期懲役,情状により500万円以下の罰金刑も併科される
②大麻取締法 単純所持 5年以下の懲役刑
営利目的所持 7年以下の懲役刑,情状により200万円以下の罰金刑も併科される。
③麻薬等取締法 単純所持 10年以下の懲役刑
営利目的所持 1年以上の有期懲役刑,情状により500万円以下の罰金刑も併科される。
④あへん法 単純所持 7年以下の懲役刑
営利目的所持 1年以上10年以下の懲役刑,情状により300万円以下の罰金刑も併科される。
⑤薬機法 単純所持 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑若しくはこれらが併科される。
「業として」販売目的で所持 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金刑若しくはこれらが併科される。

薬物の共同所持の要件についての解説

違法な薬物の所持により逮捕等がされる場合,通常は当該薬物を直接所持していた人が犯罪行為をしたことになります。もっとも,直接所持していない者についても,「共謀共同正犯」と認められる場合は,所持者と共同で薬物を所持しているものと扱われることになります。
判例では,共謀共同正犯とは,2人以上の者が,特定の犯罪を行うため,共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し,各自の犯罪を実行に移すことを内容とする謀議をなし,よって犯罪を実行した場合,互いに他人の行為を利用し,全員協力して犯罪事実を発現せしめた関係にあることを根拠に,直接実行行為を行っていない者であっても,生じた犯罪結果の全部について責任を負うことになると判断しています(最大判昭和33年5月28日参照)。
具体的には,以下の要件に該当する場合に,薬物の共同所持が認定されることになると考えられます。
①薬物の存在を認識していること
②薬物を管理処分し得る状態にあること

薬物の存在を認識していること

配偶者や,恋人,友人が薬物を所持していたからといって,自身がその薬物の存在を一切知らなかったような場合には,共同所持に該当するとは認められません。

薬物を管理処分し得る状態にあること

薬物の存在は認識していたとしても,それが自身では全く扱うことができず,所有者以外は管理処分できないような状態であれば,自身で所持をしているとは認められない可能性が高いといえます。例えば,夫が薬物を所持・使用していることを認識しているが,夫が保管場所を妻に隠している場合や,管場所自体は教えていてもその場所に鍵がかかっており自由に妻が取り出すことができない場合には,妻側で管理処分できる状態にあるとはいえません。こういった事情があれば,共同所持が認められない方向に傾くことになります。

事例ごとの共同所持の初動対応について

薬物犯罪については,職務質問等により,薬物が発見された場合その場で簡易検査が実施され,陽性という結果が出ればすぐに逮捕される可能性が高くなります。また,使用が疑われる場合は,尿の提出を求められる場合もあります。こちらも,陽性反応が出た場合はすぐに逮捕される可能性が高いです。場合によっては,薬物が差押えられ,鑑定が実施された上で,通常逮捕となるケースもあります。

配偶者や恋人と一緒に暮らしており、警察の家宅捜索で薬物が見つかった(自身は薬物を使用していない)

上述の通り,薬物が発見され,それが違法薬物であることが分かれば速やかに逮捕の手続がとられます。また,所持者が親密な関係にあれば,同居人についても,共同所持での逮捕がなされる可能性があります。
自身が薬物を使用していないにも関わらず,共同所持により逮捕された場合は,薬物の存在を認識していたか等,その事実関係を争うことになります。

配偶者や恋人と一緒に暮らしており、警察の家宅捜索で薬物が見つかった(自身も薬物を使用している)

自身も薬物を使用している場合,尿検査が実施され,陽性反応が出た場合は使用の事実を争うことが難しくなります。その場合は,尿検査等の捜査方法に違法性がなかったかをまずは確認し,違法な捜査が行われているのであれば,違法収集証拠であることを争うことになります。
捜査も適法に行われている場合は,その証拠をもって,起訴され,有罪と判断される可能性が高くなります。その場合は,速やかに自身にとって有利な情状に関する証拠を収集することになります。具体的には,常習性がなく,薬物依存の程度が軽いこと,治療施設への通所のめどをつけていること,身元引受人の存在、経済的にも立ち直れる目処があることなどを主張していくことになります。

友人の車に同乗していたところ職務質問で薬物が見つかった(自身は薬物を使用していない)

この場合で,自身も使用していない場合であれば,共同所持に該当するか否かを争うことになります。共同所持にも該当しないような場合で逮捕をされた場合は,直ちに身柄を解放するための弁護活動を行うことが求められます。

友人の車に同乗していたところ職務質問で薬物が見つかった(自身も薬物を使用している)

自身も使用している場合で,適法な捜査が行われているのであれば,上記と同様に情状に関する情報を収集していくことになります。万が一,友人が自身にとって不利な供述をしているのであれば,その供述の信用性も争っていく必要があります。

一緒に暮らしている配偶者や恋人が、薬物の所持について自首をしようとしている(自身は薬物を使用していない)

自首をすれば,刑が減刑される可能性があります。この時,本人ではない人が通報をしてしまうと,法的な「自首」には当たらないことになります。
自首をする場合,予め弁護士に相談し,弁護士が自首に同行したり,その後の刑事手続についてあらかじめアドバイスをしたりすることも可能です。

薬物に関して弁護士がサポートできること

薬物犯罪については,直接の被害者がいる犯罪(例:傷害罪,窃盗罪等)と異なり,弁護士を通じて示談をするといった活動は行いません。
この場合,そもそも,共同所持や,禁止薬物であることを知らなかった等,事実関係に争いがある場合は,当然にそのことを主張することになります。
事実関係そのものに争いがない場合の弁護士のサポートとしては,まず薬物犯罪が発覚した捜査の手続きについて,特に所持品検査や,採尿,捜索・差押え,逮捕,その後の取調べなどにおいて、重大な手続違法がなかったかどうか,違法な手続によって証拠収集されたのではないかという点を調査して,不起訴処分や無罪判決の獲得を目指します。
また,情状弁護をする際はできるだけ寛大な処分が下るよう活動をすることになります。具体的には,本人が反省していることを示した上で,薬物に対する依存性,常習性がないこと,再犯の危険がないことを主張することになります。
加えて,薬物犯罪は,再犯率が高く,中毒性の高さからも自分の力だけで再犯を防ぐことが困難です。そのため,専門医・カウンセラーのサポートや薬物依存からの回復のための施設などを利用することも必要になります。
万が一薬物事犯の当事者となってしまった場合は,早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

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